私vs国連
「あ、おばちゃん!!」
6歳の少女の甘い香りが胸に飛び込んでくる瞬間、いつも女の胸は締め付けられたように苦しくなる。
”ママ……!!”
”助けて!!”
”痛いよぉ……パパ、ママ!!”
6年前に亡くなった愛しい娘の闇の中の残像が、聞こえるはずのない悲鳴のような声が、女の周りにべっとりとまとわりつく。
「メイ、失礼よ」
クスクスと笑いながらメイの母親が自分の娘を優しく叱った。
「いいのよ……かわいいわ」
「奥様……」
淋しそうに言った女の横顔に、メイの母親はそっと声をかけた。
「あれからもう、6年経ったんですね」
「ええ……あの娘も。私の娘の『メイ』も、今のメイちゃんと同じ、6歳だったわ……」
女の瞳が、揺れていた。
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