覚めない微熱だけ、もてあましながら
男性社員のヒソヒソ話と笑い声がフロア内の一部を取り巻く。

〈なーんか、どうでもいいけど私には……〉

一部始終を観察していた麻里は、頬杖をつきながらまた小さく溜め息をついた。




………………




午後6時をまわり、ほとんど残業がないこの会社は定時の6時になると社員達は一斉に帰り支度をはじめる。気持ち程度に残って仕事を片付けようと思う者は部長や課長以外には一人もいなかった。

そして、麻里もその一人だった。パソコンを閉じ、筆記用具は一番上の引き出しにしまう。必要のない紙関係はすべてシュレッダーにかけた。


「はぁ~……」


大きく伸びをした。15分とたたないうちにほとんどの人間が帰っていった。

残っているのは、さっきのギャル系新入社員二人と部長と麻里だけ……。


「早く着替えて化粧なおさなきゃ。先に更衣室行ってるよ!」


ギャル系新入社員の一人が言う。
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