覚めない微熱だけ、もてあましながら
「でも麻里さんは楽しかったんでしょ? あの時」

「うん。楽しかったよ」

「なら、いいんじゃないかな。楽しければ」

「そ~お?」



すると、

「お待たせ致しました」

注文した三品が運ばれてきた。

「まこと、お腹空いたでしょ」

「うん。少し」

「じゃあ、ピザ半分食べていいよ」

「みかは弟思いだねー。優しいお姉ちゃん!」

「もう弟が心配で心配で……」

みかは冗談っぽく言う。

「俺は、姉貴のことが心配だな」

まことは、みかが注文したピザの上にあり得なくらいの量のタバスコを振りかけた。

……。

麻里も愛子もギョッとした。そんな二人を見たみかは、

「いつものこと」

普通に交わす。色がすっかり変わってしまった一切れのピザを、まことは口に運んだ。

「うわっ……辛そう」

麻里は思わず下を向いた。

しかしまことはケロッとしている。涼しい顔して二切れ目を口にした。

「まことは、辛い物が大好き」

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