覚めない微熱だけ、もてあましながら
「……? あぁ~! ごっめ~ん! 愛子のぶんまでタバスコかけちゃった~! ついうっかり……」

わざとらしく思えるこんな低レベルな芝居も、愛子には見抜くことはできなかった。

「いいよいいよ。私は食べなくてもいいから」

「そんなこと言わないで。もったいないでしょ?」

「でも私、辛いのは……」

「まこと君、食べさせてあげて」

「え?」

「愛子。食べさせてもらったら、食べられるでしょ?」

「でも……」

「せっかく取り分けたんだし……食べ物は粗末にしたら駄目だよ。残したら駄目」

食べ物を粗末にする……自分の行動を棚にあげ偉そうなことを平気で口にする麻里は、愛子とまことを交互に見た。

「俺は別に構わないよ。愛子さんが良ければ」

「えぇっ!」

予想外な答えに驚く愛子。緊張のあまり、両手を膝の上にのせ両肩が上にあがっている。背筋がピンと張っている。

まことは、赤いパスタをフォークでクルクルと器用に巻いた。そして、

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