覚めない微熱だけ、もてあましながら


「ほら」

愛子の目の前に突き出す。

グロテスクで不味そうな物を目の前に、一瞬顔を後ろに引いた。

「やっぱり、無理かも……」

「愛子、何言ってるの? せっかくまこと君が食べさせてくれるってのに……」

「別に無理して食べなくてもいいんじゃないの~?」

みかが口を挟む。麻里はみかを睨んだ。

「愛子、食べ物粗末にしたら目が見えなくなるんだから。子供の頃、お母さんに言われなかった?」

「わかったよ。食べればいいんでしょ? ……」

半分、ヤケになった愛子はまことからフォークをひったくろうとする。

すると、まことは素早くフォークの持っている方の手をひょいと上にあげた。

「……は?」

「いいから、あーんして」

「え……えぇー!」

「早く」

「だって、恥ずかしいもん……そんなの」

「何が?」

「……何がって……」

そして愛子は、全身が硬直したまま、ふと上を向いた。

……。

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