覚めない微熱だけ、もてあましながら
裕也を非難していても、心のどこかで“会いたい”と思っていたのかも知れない。

メールの文章には“会いたい”という言葉はなくても、あっさりとその思いは伝わってしまう。カンのいい裕也と、単純でわかりやすい愛子は考えていることが通通だ。



住所と電話番号を打ち、送信した。

早く返事来ないかな……。

返信メール……裕也が何て書いてくるのか気になった。

今思うと、裕也の住所……住所どころかどこに住んでいるのかさえ知らない。

近いのかな……。遠いのかな……。



♪♪♪~……



……!!! 来た!

テーブルの上の、携帯をひったくる。



“着いたよ”



たった4文字の、短いメール。

もっと面白味のあるような、嬉しくなるような内容のものを期待していた自分が惨めに思えた。

コレがきっかけで、高鳴っていた胸の鼓動はひとつおさまった。

部屋の窓のカーテンから、こっそり外を見る。黒いスポーツカーがウインカーをあげとまっていた。
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