覚めない微熱だけ、もてあましながら
「特に……。わかんないです……」
「そっか」
何も考えていないような返事をする裕也は相変わらずで、適当に車を走らせた。
平日でも、夜の12時をまわっても行き交う車は絶えない。こんな時間にドライブなんて……しかも男と二人きりでなんて……。もう何年ぶりだろう。
すごく、新鮮だ。
緊張していた愛子は、裕也に話しかけられても質問に答えるだけで話がそこで終わってしまう。それでも裕也は余計なツッコミはしない。少し間を取ってから、話題をかえてくる。
愛子はただ質問に答え、沈黙になると窓の外を見る。
そんなことがいくつも繰り返され、気がつくと横浜に来ていた。
港に車をとめ、裕也はシートベルトをはずし大きく伸びをした。
ふと横を見ると、愛子がシートベルトをしたまま硬直している。両肩が上がり、両手を綺麗に膝の上に置いている。
「何で緊張してんの?」
「えっ! 別に……」
図星をつかれ言い訳することもできない。