覚めない微熱だけ、もてあましながら
「緊張するような男でもないだろ、俺なんて」
「そんな……」
……。
「そんなこと……ないです」
まともに顔を見れず、うつむいたまま言った。
「はぁ~……。コーヒー、飲める?」
「……はい」
「うん。じゃあ、ちょっと待ってて」
そう言って裕也は外へ出ていった。愛子はヘッドライトから裕也の後ろ姿を見ていた。
すぐ前には、街の灯かりが鮮やかで、夜の海を色々な色が照らしていた。水が揺らめくたびに反射した色も揺らめく。
そんな幻想的なものに見入っていた時、
カチャ……
車の運転席のドアが開いた。
「はい」
裕也は温かいブラックの缶コーヒーを愛子に渡した。
「ありがとうございます……」
「久しぶりだなぁ、ここに来るの」
「……はい」
「ねぇ」
と、裕也は愛子の顔を覗き込んだ。
……!!!
愛子は心臓をパンチされたような衝撃に襲われた。
顔と顔が真正面に向き、ほの暗い車の中で目線がぶつかった。