覚めない微熱だけ、もてあましながら
獲物を狙うような目つきで愛子を見る。瞬きもせずに。

目をそらすと一気に襲いかかってきそうで怖い。ガンのつけ合いになってきた時、

……!!!

裕也は右腕をグイッとのばし愛子に覆い被さってきた。

……と思いきや愛子のシートベルトを外した。

“えっ?……”

拍子抜けした愛子の顔を見て裕也は、

「どうしたの?」

「い、いや……何でもないです」

「ほんとに何でもないの? 何か、さっきより超緊張してない?」

「……そんなことないです」

一応弁解はしたがそんなことは裕也には通用しなかった。

「ふっ……」

裕也は鼻で笑い、手のひらをおでこにつけた。

「まさかとは思うけど……」

「な、何ですか?」

「俺が、何か変なことでもすると思った?」

「え、いや……別に……」

「だよな。あ、一応聞いてみただけ」

……。

図星をつかれ言葉をなくした愛子は、裕也が買ってきた缶コーヒーを開ける。

「うわぁ……苦っ」

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