覚めない微熱だけ、もてあましながら


「ふっ……」

裕也は、急に、何かを思ったかのように鼻で笑った。どうやらこの男は、鼻で笑うのが癖のようだ。

「まさかね……」

「え?」

「いや……まさか、君の方から告ってくるなんて」

……。

「俺が君に告った時は、たいした乗り気じゃなかったのに」

そう言って裕也は愛子の目をガン見した。

「あ、あの時はあの時……今日は今日だから」

「へぇ~、気分によってコロコロ変わるんだ」

「そういうわけじゃないけど」

「あの時の俺の告白、マジだったのに」

「急だったから、びっくりして……」

「ふぅ~……まったく……しょうがないお嬢さんだな」

裕也は残っていた缶コーヒーを飲み干し、体を前へと向き直った。

車にエンジンをかけ、バックさせ横浜港に背を向けた。

午前2時――。ガラガラな車道を、ただ、黙々と車を走らせる裕也の横顔を見る。何にも喋ってない。

何で急に……。

いったいどうしたのだろう……。

“もう! 何か喋ってよ!”
< 117 / 147 >

この作品をシェア

pagetop