覚めない微熱だけ、もてあましながら
「ふっ……」
裕也は、急に、何かを思ったかのように鼻で笑った。どうやらこの男は、鼻で笑うのが癖のようだ。
「まさかね……」
「え?」
「いや……まさか、君の方から告ってくるなんて」
……。
「俺が君に告った時は、たいした乗り気じゃなかったのに」
そう言って裕也は愛子の目をガン見した。
「あ、あの時はあの時……今日は今日だから」
「へぇ~、気分によってコロコロ変わるんだ」
「そういうわけじゃないけど」
「あの時の俺の告白、マジだったのに」
「急だったから、びっくりして……」
「ふぅ~……まったく……しょうがないお嬢さんだな」
裕也は残っていた缶コーヒーを飲み干し、体を前へと向き直った。
車にエンジンをかけ、バックさせ横浜港に背を向けた。
午前2時――。ガラガラな車道を、ただ、黙々と車を走らせる裕也の横顔を見る。何にも喋ってない。
何で急に……。
いったいどうしたのだろう……。
“もう! 何か喋ってよ!”