覚めない微熱だけ、もてあましながら
そんな愛子の心の叫びも届かない。
やがて信号が赤になり、裕也は煙草に火をつけた。
信号がかわっても、くわえ煙草で、ひたすらに車を走らせるだけ。何とも言えない空気が狭い車内を取り巻いている。
ずっと無言のせいか、段々と睡魔に襲われつつある。
相手に運転をさせておいて自分ばかりが寝るわけにはいかない。
そう思うが眠気には勝てず、ついに上まぶたと下まぶたが条約を結んでしまった。
まだ意識はある。どうせ裕也は何も喋らない。
だから……
だから黙って目を閉じていても平気だ。
目を閉じているだけだから……絶対に寝ないから……。
自分に言い聞かせるが、暖かい車内はとても気持ちが良くてつい誘惑に負けてしまいそうになる。
何だか、脳が引っ張られていく……
あっという間に、意識は落ちた。
……!!!
一瞬記憶が飛んだと同時に、頭が前にガクッと倒れた。学生の頃、授業中によく見られた光景だ。