覚めない微熱だけ、もてあましながら
あまりの衝撃に、完全に意識が戻りハッとした。

“今の見られたかな……”

チラッと横目で運転席を見た。

“気づいてないみたいだ。良かった”

と、思った瞬間。

「だいぶ眠いみたいだね」

……!!!

「もうちょっとで着くから、それまで寝てていいよ」

「ありがとう……ございます」

「着いたら起こすから」

「……はい」

再び目を閉じる。暖かい空気に包まれ、また、遠い遠い所へと記憶が連れていかれそうになる。

……が、二度目はとなると逆に目がさえてしまい眠れなくなった。

「寝てなくていいの?」

「もう眠くないです」

「じゃあ、今日はオールでドライブする?」

「えっ!?」

「嘘に決まってんだろ。明日も仕事だし」

「ですよね……」

「え? もしかして、本気にした?」

「あ、いや……ちょっとだけ」

「俺、もう30だよ。いくら何でもオールは無理無理」

「……はい」



愛子のアパートは、もう、すぐそこだ。

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