覚めない微熱だけ、もてあましながら


と、もう一人が意味深な発言を残し同じくマグカップを持って戻っていった。

その場に取り残された麻里は、ふと正面から歩いてくる裕也に気づきハッとした。

さっきの意味深な発言の男は裕也のことだったのか。

裕也は何気に給湯室の前で立ち止まった。

「眠気覚ましに一杯いかが?」

麻里がマグカップを持ってにっこり笑っている。

「ありがとう」



畳二枚分くらいの狭い場所に、

男と女がいる。



裕也はスーツのポケットから煙草を取り出し、火をつけた。

上を向き思い切り煙を吐いた。

「はぁ~……、やっと目が覚めてきた」

「何か見覚えのある人が眠そうな顔をして歩いてくるから」

「眠気覚ましに一杯いかが? ってか」

「そういうことです」

……。

「で? 何でそんなに寝不足なの?」

「ちょっとな」

「教えてよ」

「やーだ」

「何で? あ……わかった。デートしてたとか?」

……!!!

裕也は驚き目が泳いでいる。

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