覚めない微熱だけ、もてあましながら
「普通に楽しかった。女の子とドライブなんて超久しぶりだったし」

「嘘でしょ~?」

……。

裕也は、愛子と行った深夜のドライブを思い出し、一人でニヤけた。

「思い出し笑いしてる……」

「愛子さんって、いい子だなーって思ってさ」

「……うん」

裕也は二本目の煙草に火をつけた。

何気に腕時計を見ると意外に時間は経っていて、

「あ、そろそろ戻らなきゃな」

火をつけたばかりの煙草を灰皿に潰そうとする。

「これ、吸う?」

「え? うん……」

「もったいないからさ」

裕也はマグカップにブラックのコーヒーを半分くらい残し、給湯室を出た。



麻里は裕也に手渡された吸いかけの煙草を持ったまま、後ろ姿を見送る。

やがてその姿は、左に曲がり見えなくなった。麻里は給湯室に引っ込み半分くらいになった煙草を口にした。

ゆっくり煙を吐き、煙草の先端を見つめた。



何だか、胸の中が切ない。



うまく説明できない感情が、渦巻いている。
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