覚めない微熱だけ、もてあましながら


さっきの裕也の後ろ姿を思い出し、煙草で間接キスをしたことに胸がドキドキした。



こんなことでドキドキする自分が新鮮に思えた。



この私が、間接キスぐらいでドキドキするなんて。

こんなことぐらいで……。

今までは、夏野君なんて別にどうでもよかった。

恋愛の対象外だった、ただの職場の先輩が、



気になる存在に変わっていくのがわかる。



自分でもわからない。どこでスイッチが入ったのか、わからない。



ぼんやりしてるなかでマグカップが視界に入った。手に取り、チラッと中を見て一口飲んでみようとする。あえてカップをずらし、口をつけてないところから飲んだ。

……!!!

すっかり冷めてしまったブラックのコーヒーは、最高に不味くて流しに捨てた。

小さくため息をつき、ふと愛子のことを思い出す。

愛子……夏野君……どうしよう。あの二人、付き合うの? あの二人が付き合ったらら私は夏野君と付き合えなくなる。

でも私は……

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