覚めない微熱だけ、もてあましながら
「何やってんの?」

頭の横を手で覆いながら上を見ると、裕也が不思議そうな顔をして立っていた。右手には携帯を持ち、手のひらの上で遊ばせている。

「あ……、とっても言いづらいんだけど……」

「何?」

「あの……さ、これからドライブしない?」

「いきなり何? つーか別にいいけど?」

呆気なくオッケーしてくれた裕也に麻里は何だか拍子抜けした。二人は、会社の地下にある駐車場まで一緒に行き、裕也のマイカーに乗り込んだ。

車は地上に出た。出ると裕也は早速行き先を切り出した。

「どこ行く?」

「ホテル」

「は?」

「なんてね」

「冗談キツいよな」

「ごめんごめん」

麻里は明るく笑っていたが、一瞬で表情が曇った。そして、

「横浜行こう」

「いいよ」

「夏野君が愛子を連れて行った横浜に、私も連れて行ってほしいな」

……。

裕也は黙っている。チラッと横顔を見ると、何か言葉をさがしているように思えた。

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