覚めない微熱だけ、もてあましながら
「ところでお前さ、さっきうちの課の前で何してたの?」

話をそらすための話題を無理やりさがしてきたかのように、裕也は言った。

「夏野君にデートの申し込み」

「ほんとかよ」

「ほんとだってば。でも、ドア開けれなくて聞き耳をたてようと思ったらいきなりドアが開いた」

「それが俺だった」

「ちょっと嬉しかったな」

「ちょっとか……」

「え? あ……すごい嬉しかった」

「俺も嬉しかった」

「何が?」

「いきなり、ドライブしようなんて……びっくりしたけど何か嬉しかった」

……。

「あんまり女の子から誘われたことないからさ」

「誘ったことはあっても?」

「さぁな~……どうだろう」

裕也は麻里の方も見ずに意味深な目で真っ直ぐ前を見つめる。

「ねぇ」

「何?」

裕也は真正面を見据えたまま無表情で言った。

「ちょっと、言いづらいんだけど……」

「また言いづらいこと? 今度は何?」

「愛子のこと……どう思う?」

< 131 / 147 >

この作品をシェア

pagetop