覚めない微熱だけ、もてあましながら
ドキドキさせられる裕也の言動に、麻里は飲まれっぱなしで一方的に主導権を握られている感じがする。何だかそれが悔しいやら嬉しいやら、複雑な心境だった。
[よくわからない人]、[何考えてるかわからない人]裕也に対する印象だった。でもそんなところが逆におもしろいかもと思ったりもする。
「この辺でいい?」
車は港に着いた。以前も、裕也は愛子とここに来たのだろうか。とても気になることが聞けない。聞いたあとに後悔しそうだったから。
「綺麗だね。キラキラしてる」
気を紛らわすために、そんなことを言ってみた。水面には、赤や青や黄色など灯りが反射してユラユラと揺れている。
「こんな綺麗なキラキラを、愛子と一緒に見たのかな……?」
「見たよ。だから何?」
「……別に!」
“もう! 何でそんなに素っ気ないの?”
心の中ではムカついていても、そんなところが魅力的に思えるのはなぜだろう。麻里が今までに付き合ってきた男達とはタイプが違っていた。