覚めない微熱だけ、もてあましながら
煙を吐き出し一息ついたところで、
「お前、俺と社内恋愛したいんだろ?」
「そ、そんなことないよ」
「俺と付き合いたいんだろ?」
「え……そんなこと……」
裕也は早々と煙草を潰し、半身の姿勢で麻里を見た。麻里は固まって動けないでいる。
「好きなら好きって言えよ」
“マジ? 夏野裕也……マジなの~?”
「お前の方から好きだって言わないと、社内恋愛は始まらないぞ」
「え……」
“まさか、私……この男に主導権握られてる? この私が?”
麻里はゆっくり顔を右に向けた。
……!!!
裕也は目を細め、射るような視線で麻里を見ていた。
“何こいつ~! 超ドS顔~!”
「あ、あのさ……」
「うん。何? はっきり言ってごらん?」
「付き合って。会社の人には内緒で、会社の中で」
「わかったよ」
射るような目から、包容力のある優しい目にかわる。
ドキドキが止まらなくて冷たくなった指先を裕也の頬へとのばした。