覚めない微熱だけ、もてあましながら


「よし!」

「ん?」

「そろそろ帰るか」

「う、うん……」

“帰るってどこに? 私んち? それとも、アンタんち!?”

裕也は早く家に帰りたいのか真夜中の車道をビュンビュン飛ばしていった。信号が赤になって停止するたびに麻里の右手を握りしめた。

「ね、ねぇ……夏野君って一人暮らしだっけ?」

「うん。そうだけど」

「そっか……」

「何が言いたいかわかった」

「えっ?」

「うん、わかった」

裕也はズルい顔をしながら、もったいぶった態度を取る。

「何がわかったの?」

「言っちゃっていいのかなぁ~」

「言ってよ」

「う~ん……、やっぱ言わない」

「は?」

裕也は一瞬も麻里の方は見ない。運転しているせいもあるがずっと正面を見ている。

「じゃあ、あなたの方から言って下さい」

「な、何で私が……!」

いたずらっぽく、意地悪っぽく敬語混じりで言ってきた裕也に、心底から逆らえない自分がいた。

“も~! どうして~!”
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