覚めない微熱だけ、もてあましながら
11、三股をかける女~愛子の場合~〈②友達の弟編〉
〈11、三股をかける女~愛子の場合~〈②友達の弟編〉〉
冬の海って……寂れた雰囲気バリバリ漂ってるが、貴重な太陽の光が差し込み人もたくさんいれば、それなりに見れる風景ではある。たくさん人はいても夏みたいにパラソルで砂浜を埋めつくすほど混んでいないところがいい。
海に来るのは久しぶりだ。定番ではない、真冬のグレーに染まった海を眺めるのも新鮮だ。
雲が晴れて急に太陽の光が射したかと思えば、すぐに別の雲が太陽を隠す。
少しだけ高い波が来て、愛子のブーツのつま先すれすれまで来て引いていった。
急に冷たい風が首元に入り込んでくる。愛子は、マフラーをアゴまで包んだ。
寒いけど見ていたい、冬の海。心地良い、とまでは言わないが、しばらくの間はここにいられる気がした。
「愛子!」
静寂を切り裂く甲高い声に驚いて振り向くと、みかが両膝に両手をつき、ゼェゼェしながら愛子を見ている。
「あ、みか!」