覚めない微熱だけ、もてあましながら
「ごめんね、寒かったでしょ」

「大丈夫」

「そう? ゲホゲホッ……」


みかは咳が止まらない。冬に走ると、冷たい空気を吸い込むと無性に咳が出る。


「ちょっと大丈夫?」

「うん、寒いから早くウチ行こう」


二人は、みかの家へ向かった。

ここの海岸から五分も歩かないところにみかの家があった。白壁の二階建てで、洋風な感じのレトロな建物だ。大きい木が二本立っていて、その木と木の間が、人が一人通れるくらいのスペースがある。ここの家には門扉はないが、この “木たち” が代わりとなっているように見えた。わざとそうやって木を植えたのかは定かではない。その木たちの間を抜けるとすぐに、正面玄関が見えた。

この家は周りが木々に囲まれていて、一歩踏み出すと森の中に家がある、と錯覚してしまう。建物も西洋風で、窓は白いペンキが塗られた木枠で縦に上げるタイプ、赤い三角屋根が一際目につく。元々白壁だったと思われるが、年月とともに灰色になっている。
< 142 / 147 >

この作品をシェア

pagetop