覚めない微熱だけ、もてあましながら
みかが笑顔だけで、了解、と言った。


カウンターキッチンの向こうにはみかの姿がある。やかんに火をかけているのが見えた。


みんな良い所に住んでいる。狭い安アパートに住んでいるのは自分の稼ぎが悪いからだ、みかや麻里に比べると自分なんか、と愛子は自虐的になる。基本給プラス歩合制の仕事をしていても、なんら毎月給料は変わらない。いくら好きな仕事と言えど、割に合わないのは考えものだ。それでも、今から転職する勇気はなかった。なんの取り柄もないからだ。麻里みたいに事務をとれるわけでもない。資格といっても、愛子はアロマセラピストの資格しか持っていない。パソコンだってインターネットしかできない。エクセルやワードなんて聞いたことはあるが、見たこともない。結局、今の仕事を続けるしかないのだ。


みかが、トレイにマグカップをふたつ乗せてテーブルに置いた。


「素敵な家だね」


愛子が言うと、
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