覚めない微熱だけ、もてあましながら
右の男がそう言って右手を差し出す。


「麻里、俺のところにおいで」


次に左の男がそう言って左手を差し出す。

「おいで……」

真ん中の男がそう言って右手を差し出す。

三人共、みんな同じことを言う。行動も同じ……。


……何で?


服装や行動はわかるのに顔はわからない。

声は聞こえるのに……。


声は……


……麻里


聞こえるのに……


麻里ーっ!


……ん?


ちょっと麻里ってば!


誰か呼んでる?


今度は女の声?


……えっ?何?なんなの?


すると三人の男達は、それぞれのばしていた手をおろし、踵を返した。

そして、三人は麻里に背を向け歩いていった。


待って!


麻里は慌てて走り出す。男達は振り向きもせず去って行った。麻里は走って捕まえようとするが、足がもつれて転び立ち上がれなくなった。気は焦る一方……。
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