覚めない微熱だけ、もてあましながら
「ごめ〜ん!実家から電話かかってきてて。うちのお母さん一人でずっと喋ってるからなかなか切るタイミング難しくて」


まさか寝ていたなんて言えるはずもなかった。言えるはずもなかった……が、寝起きの目をしていないか髪は乱れていないか気になってしまう。

集合時間は夜七時――


あと五分ある。


「あ、紹介するね。私の知り合いの斉藤明君。この子は私と同じ職場で仲良しの由比麻里ちゃん」


那奈子は麻里を紹介し、麻里の肩をポンッと叩いた。

麻里は少し緊張しながら、


「こんばんは。よろしくお願いします」


と言い、軽く会釈をして上目遣いで明を見た。すぐ目の前に可愛い紙袋を突きつけられ、


「よろしく……これ良かったら食って」


明に包みを手渡される麻里。キョトンとして包みを受け取る麻里に那奈子が、


「あ、彼ね、仕事パティシエなの」

「え?本当?甘い物大好きだから。ありがとう!」
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