覚めない微熱だけ、もてあましながら
地上を出てもなお人が多かった。しかしほんの数メートル走ると静かな空間に辿り着く。走ったところに七階建てのマンションに到着した。麻里のマンションだ。エレベーターの〈↑〉のボタンを押す。腕時計を見ると約束の時間は過ぎていた。

焦るもののエレベーターはなかなか降りてこない。じっとしていられず上を見たり下を見たりコートのポケットに手を突っ込んでみたり、腕を組んでみたり……落ち着けなかった。

ふと表玄関の方を見るとカップルのような若い男女が入ってきた。近づいてくる……。よく見ると愛子の友達の、平田みかと……若い男。


「愛子~。今来たの?」

「うん! 七時に間に合わなかった~」

「私も~。まぁ、いいんじゃない? 別に。……あ、私の弟。今日一緒に連れてきちゃた」


平田みかの実の弟、平田まこと。まことは愛子をチラッと見てすぐに目をそらした。


「ごめんね~愛子。この子たぶん緊張~」
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