覚めない微熱だけ、もてあましながら
顔色ひとつ変えずに明は言った。


「マジ〜? じゃあ、まだまだいける? 一緒に日本酒飲もうか?」

「ちょっと、もうお酒は控えた方がいいんじゃないの?」


麻里は那奈子の言うことも聞かずキッチンへ行こうとした時、足がふらついて食卓テーブルにぶつかった。その瞬間……

いくつかのワイングラスが床に落ち、フローリングは水浸しになった。


「キャアァ〜!」


女性陣は悲鳴をあげる。


「キャアァ〜! ってなによ〜、も〜。大げさなんだから〜」


麻里は呑気だった。那奈子とみかが割れたワイングラスを片付けようとするが、


「あ、いいよ。俺がやるよ」


明は素手で割れ物を片付け、雑巾で床を拭いた。

那奈子とみかは、“ごめんね、明君”と何度も口々に言っていた。

麻里はそんな明の親切心をよそに相変わらず周りに絡み続ける。

“夏野君の私服はじめて見たよ。意外とジーンズ似合うんだね”
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