覚めない微熱だけ、もてあましながら
まことは優しい目で愛子を見る。


「大丈夫だよ。一人で帰る」

「本当に大丈夫〜? 気をつけてよ〜」

「うん。ありがとう。大丈夫だから。それじゃ……お疲れさまでした」


愛子は帰っていった。


バタン……


ドアを閉める音が、なんだか場の雰囲気一気に盛り下げた。


「私も帰ろうかなぁ……」


と那奈子。


“夏野君は愛子のことが気になる?”

“まこと君……愛子は一人で帰れるんだよ。明君も……優しいんだね。みんなみんな……愛子なんだね……”


色々な思いが張り巡らされ麻里は涙をこぼした。みんなが見てなかったのが救いだった。すかさず涙を拭う。そして麻里はみんなのアドレスと電話番号を聞いた。今日のこの出会いを、縁を大事にしたいから……と。

みんなが帰っていき、賑やかだった部屋は無音と化した。今日は楽しかった……楽しかったけど何かモヤモヤする。


「俺ももうそろそろ……」
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