覚めない微熱だけ、もてあましながら
麻里、あんた最低だね。そんなことして何になるの?

鏡の中の私は、なんだかすごく怒っている。でもそんなことは別にお構いなしだった。


「ねぇ、私、本気だよ」


麻里は “鏡の中の私” を瞬きもせずに見つめていた。お互いに睨み合う。お互いに、真剣な目つきでやる気がみなぎっていた。


「お願い。協力してよ」

……。

「お願いします……」


麻里は目をそらさない。鏡の中の自分に懇願していた。

わかった。でも後悔しないでね。


「うん……わかった」


麻里はスマホを制服のポケットに入れ化粧室を出た。

自分でもどれくらいの間化粧室にいたのかわからない。あり得ないくらい仕事を放棄してしまった。部長の目が気になる……。きっと怒られるにちがいない。当然だ。麻里はドアの前で深呼吸をし、気合いを入れた。説教覚悟で入ろうとしていた。


「……よし」
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