覚めない微熱だけ、もてあましながら
なんで私なんかを?
疑問に思っていたが、嬉しさのあまり、疑問はどこかに置き忘れていた。
………………
赤坂見附駅、一番出口付近で待ち合わせをしていた。午後六時、地下鉄の階段を降りていく人の数がどっと増える。四方八方、キョロキョロしてしまう。本当に来るのか不安になる。
まだ五分前なのに……。
まだ五分あるのに……。
それなのに、遅いと感じてしまう。
どうやら気持ちが焦ってきている。
“どうしよう……すっぽかされたらどうしよう……”
愛子は、自分の足元を見つめた。
昨日の夜、いつもより気合いを入れて手入れしたブーツ。明と会う約束をしたから、汚い靴では恥ずかしいと思い一生懸命磨いた。
“明君……”
ボーッとしていたその時――
「わぁ~!」
愛子は叫んだ。ずっと下を向いていたら誰かが顔を覗き込んできた。
明だった。
「あ……」
「下向いてたからわかんなかったよ」
「だから覗き込んだの?」
「そう」
明はニッコリ笑った。
「はい。プレゼント」
「え? 何?」
「俺お手製の、ショートケーキ」
「本当に? ありがとう!」
愛子は、涙が出そうになった。すごく、嬉しかった。
疑問に思っていたが、嬉しさのあまり、疑問はどこかに置き忘れていた。
………………
赤坂見附駅、一番出口付近で待ち合わせをしていた。午後六時、地下鉄の階段を降りていく人の数がどっと増える。四方八方、キョロキョロしてしまう。本当に来るのか不安になる。
まだ五分前なのに……。
まだ五分あるのに……。
それなのに、遅いと感じてしまう。
どうやら気持ちが焦ってきている。
“どうしよう……すっぽかされたらどうしよう……”
愛子は、自分の足元を見つめた。
昨日の夜、いつもより気合いを入れて手入れしたブーツ。明と会う約束をしたから、汚い靴では恥ずかしいと思い一生懸命磨いた。
“明君……”
ボーッとしていたその時――
「わぁ~!」
愛子は叫んだ。ずっと下を向いていたら誰かが顔を覗き込んできた。
明だった。
「あ……」
「下向いてたからわかんなかったよ」
「だから覗き込んだの?」
「そう」
明はニッコリ笑った。
「はい。プレゼント」
「え? 何?」
「俺お手製の、ショートケーキ」
「本当に? ありがとう!」
愛子は、涙が出そうになった。すごく、嬉しかった。