覚めない微熱だけ、もてあましながら
「どうしたの? 何かクラくない?」

「そんなことないよ。二人だから、ちょっと緊張って言うか……まぁ色々」

「そっか」

明は素っ気なく言い、熱燗を飲み干してしまった。そして、二杯目も注文する。

二杯目と、注文していた玉子やらハンペン、焼き豆腐……などが運ばれてきた。愛子は食べ物もドリンクも全然口へ運ばない。少し下を向いて全身が強張っていた。

「まだ緊張してるの?」

「うん……まぁ……」

二人はカウンターに座っていたが、愛子は隣に座っている明の方を見ようともしない。

「ちょっと、こっち向いて」

「えっ?」

明は、自分の方を向いた愛子にちぎった焼き豆腐を口の中に入れた。

「熱っ……!」

「あ、ごめん。ふぅ~ふぅ~するの忘れてた」

明は、もう一度ちぎって冷ましてから愛子の口の中へ放り込んだ。

「うまいだろ?」

「うん」

「こうでもしないと、食わなそうだからさ」

明にそう言われて愛子は少し緊張が解けてきた。

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