覚めない微熱だけ、もてあましながら
混み合う車内で、自分の世界に浸りながら。
遠かった道のりに、やっと最寄りの駅に着いた。駅からは歩いてほんの数分だ。愛子は部屋へ入るなり冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し一気に飲み干した。
ふぅ~……
アルコールを口にしたせいか喉が渇いていたから。
そしてパソコンを立ち上げた。
カタカタカタ……
キーボードを叩く音。
テレビもつけず、音楽もかけず、真夜中にパソコンの画面と御対面中だ。気がつけばもう深夜の時間帯だった。
愛子は、自身のブログに、こう書き込んだ。
好きな人ができました。
その人は、茶髪にヒゲにピアスで……見た目はかなり遊び人だけど、でも優しくてすごく気を使ってくれるいい人です。ヒゲとかピアスとかだけど、仕事はパティシエです!
それから、
今日、はじめて二人きりで会って、彼オリジナルのショートケーキをもらいました。
と付け加えた。そんなことを書き込み、パソコンを閉じた。