覚めない微熱だけ、もてあましながら


混み合う車内で、自分の世界に浸りながら。



遠かった道のりに、やっと最寄りの駅に着いた。駅からは歩いてほんの数分だ。愛子は部屋へ入るなり冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し一気に飲み干した。

ふぅ~……

アルコールを口にしたせいか喉が渇いていたから。

そしてパソコンを立ち上げた。



カタカタカタ……



キーボードを叩く音。

テレビもつけず、音楽もかけず、真夜中にパソコンの画面と御対面中だ。気がつけばもう深夜の時間帯だった。

愛子は、自身のブログに、こう書き込んだ。



好きな人ができました。

その人は、茶髪にヒゲにピアスで……見た目はかなり遊び人だけど、でも優しくてすごく気を使ってくれるいい人です。ヒゲとかピアスとかだけど、仕事はパティシエです!

それから、

今日、はじめて二人きりで会って、彼オリジナルのショートケーキをもらいました。

と付け加えた。そんなことを書き込み、パソコンを閉じた。

< 51 / 147 >

この作品をシェア

pagetop