覚めない微熱だけ、もてあましながら


「なーんだ。二人きりじゃないのか」

「うん……二人はちょっとね……」

「了解。また、私服の君が見れるんだね。楽しみにしてるよ」

「はぁ?」

「じゃ、またね」

「ちょ、ちょっと!」



プーッ……、プーッ……



電話は一方的に切れた。

“何だよ、この男っ! ……勘違いされたら困る。でも愛子も一緒って言ったから大丈夫か……”

麻里は大きくため息をついた。

“あの男~っ! 話の途中で電話切りやがって……!”

残りのコーヒーを飲み干し、ソファの背もたれに寄りかかりながら天井を見上げた。すると握りしめていた携帯が鳴る。驚いて姿勢を戻し画面を見ると愛子からのメールだった。

“夏野さん……覚えてるけど、顔はあんまり覚えてない。いつでも誘って! いつも暇だから(笑)”

“ふーん……。いつも暇なんだ……愛子は。明君とデートしないの?”

麻里はそう思いながら愛子に返事を打つ。

“明日の日曜日の七時に待ち合わせしたいんだけど、大丈夫?”
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