覚めない微熱だけ、もてあましながら
そして、大きすぎた声に片手で自分の口を抑え席に戻るのをやめる。

再びトイレへ。

“どうしよう……一気にここまでくるなんて。展開が早すぎるよ! でも作戦がうまくいくかも!”

麻里はドキドキしていた。意味もなく手を洗ったりしている。

“あの二人の話は知らないふりをしなきゃ”



麻里が席へ戻ろうとすると、裕也と愛子は帰る準備をしていた。

「あれ? どうしたの?」

「ごめん。私もう帰るわ。明日も仕事だし」

「え~終電ギリギリまで飲もうよ~」

「ん~……でも寝坊して遅刻したら困るし」

「そっかぁ。了解。じゃ、またね」

「うん。お疲れ」

愛子は居酒屋を出た。

「はぁ~……」

ため息をつく裕也に麻里は、

「どうしたの?」

「ヤバいなぁ……俺」

「何が?」

「もうマジでヤバすぎんだよ」

「て言うかさ~、愛子は仕事を理由に帰ってばっかりだよね。ホームパーティの時もそうだったし」

「あぁ~! 俺マジでヤベェ! もう帰る! じゃ!」
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