覚めない微熱だけ、もてあましながら
“ふざけるな! 人をからかいやがって! 告白なんか絶対断ってやる!”

愛子は一人でプンプンしながら家を出た。

そう、これから裕也の会社へ行って彼を呼び出し告白を断るつもりでいた。

“確か、麻里と同じ会社……”

それを頼りに電車に乗り込んだ。顔は、ほとんどスッピン。髪は後ろでひとつ縛り。服装は部屋着ではないものの、軽装すぎる軽装だった。

思い立ったらすぐに行動に移す。準備も何もあったもんじゃない。



電車を乗り継ぎ最寄りの駅に着いた。麻里と同じ会社ということだが場所ははっきりわからない。

“こっちだったかな……確か北口だったと思うけど……”

北口へ出て駅前を見渡すがその先をどう行っていいかわからない。

駅入口の、ど真ん中で突っ立ったままキョロキョロしていると、

「あれ? こないだの、お姉ちゃん?」

聞き覚えのある声に慌てて振り向くと、夏野裕也がスーツのポケットに両手を突っ込み、ガムを噛みながらおチャラけた顔して立っていた。
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