覚めない微熱だけ、もてあましながら
7、巡ってきた偶然~第三のターゲット~


〈7、巡ってきた偶然~第三のターゲット~〉



愛子はマンションに着くなり、ソファに座った。ソファのバネが壊れるかと思うくらい思い切り座った。自分の家が一番安心できる……落ち着ける。一気に疲れが押し寄せ、そのまま動きたくない衝動にかられた。

一人、部屋で静かにしていると、さっきのことを思い出してしまう。思い出したくないのに……思い出してしまう。わざわざ電車を乗り継いで、土地勘のない場所に来て駅前で一人さ迷う自分……裕也に会いたくて来たはずなのに、彼の意味不明な態度に戸惑うばかり。でも、どうして“会いたい”って思ったんだろう?

そして、裕也の顔を思い浮かべると同時に、明の顔が浮かんでくる。明の顔を思い浮かべると、裕也の顔が浮かんでくる……二人の男が、浮かぶ。

愛子はブログを開いた。

“気になる人がいます。年上の、サラリーマンです。これから会いに行ってきます! すごく緊張するなぁ~。何を話していいかわかんないよぉ~。かなりドキドキですっ!”
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