覚めない微熱だけ、もてあましながら
大学入学と同時に覚えた料理のレパートリーも増え、今では料理は趣味の領域となった。

「姉貴、昼飯食った?」

「ん~? あ~、まだ」

みかは、振り向きもせずに言う。相変わらずテレビを見て笑っている。

まことはそれ以上何も言わず、キッチンに立った。

快適な包丁の音が聞こえてくる。香ばしい匂いも立ち込めてきた。

「あ、そうだ、まこと~」

「何?」

まことは包丁で野菜を刻みながら返事をする。

「ついでに洗濯もお願いね」

「わかったよ」

「ごめんね~ほんと」

みかは、申し訳ないという気持ちがこもっていない謝り方をした。

口先だけで謝られるのは、いつものこと。三年も二人で生活しているから、もう慣れっこになっていた。

料理の合間に洗濯もする。洗濯カゴの中身を分別する。みかの下着が出てきても、まことは特に何とも思わず普通に手に取る。自分のトランクスと一緒に洗濯機の中へ放り込み、スタートボタンを押した。



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