覚めない微熱だけ、もてあましながら
キッチンへ戻り、出来上がった昼食をリビングへ運ぶ。おいしそうな湯気が周りを包み込み、食欲は一気に加速した。今日のメニューは、まことの大好物の豚キムチチャーハン。

「いい匂~い」

嬉しそうに言うみかに、まことは、

「今日のはいつもより辛いよ。キムチ多めにしたから」

「マジ~? 楽しみ~!」

一口、口へ運ぶ。

「どう?」

「ん~! 辛~い! でもおいしいよ、まこと」

「良かった」

みかは顔をクチャクチャにして一人で“辛い”を連発していた。

「あ、そう言えば今日さ……」

「何?」

「姉貴の友達見かけたよ。電車の乗り換えの所で」

「友達? 誰だろ」

「前にホームパーティーに来てた人」

「……? あぁ~! 愛子?」

「うん。たぶんその人」

「へぇ! そうなんだ。そりゃあ偶然だわね」

別に関心もなく言い放つ。辛さでかいた汗をティッシュで拭いてウーロン茶をゴクゴクと音をたてながら飲み干した。

「はぁ~……、おなかいっぱい。ふぅ~!」
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