覚めない微熱だけ、もてあましながら


携帯を握り直す。ギラギラしたその目は肉食動物のようだ。

「近くまで会いに行ったんだけど……」

「近くって?」

「夏野さんと麻里の会社の近くまで、会いに行った」

「本当に?」

「うん……でも駅まで着いたんだけど、場所がわからなくて」

……。

「どうしようと思ってウロウロしてたら、偶然駅前で会って。一言二言話しただけ。……それだけ」

「どうして、わざわざ会社の近くまで?」

「わかんない」

……。

「何か、思い立ったら吉日って言うか……まぁ、実際は吉日ではなかったけどね」

愛子のこのセリフが、麻里には何だか虚しく聞こえた。

「ねぇ、愛子。詳しく話してよ」

「ただ、なんとなく会いたくなって……」

「うん。それで?」

「それだけ」

愛子はわざと明るい声で、一言そう言った。

そして、

「それからさぁ、平田まこと君って覚えてる?」

「覚えてるよ。ホームパーティーに来てた人だよね?」

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