覚めない微熱だけ、もてあましながら
「ねぇ、みかの弟のまこと君って飲み屋でバイトしてたよね?」

「うん」

「近いうちに行きたいんだけど……」

「えっ!? 急だねぇ。どうしたのぉ?」

「いや、別に。どんな所か行ってみたかったんだ。ほら、前から言ってたじゃん。まこと君の店に行ってみたかった、って」

「あ~、そうだったっけ~。うん、了解。じゃ、まことに言っておくね」

「うん。みかも一緒に来て。あ、それと愛子も一緒だから」

「わかったぁ」

「あ、私よりも愛子の方が乗り気だから。まぁ、私は付き添いみたいな感じ」

「へぇ~、そうなんだ」

「うん。そうなの。じゃ、また連絡するね」

みかの返事も聞かずに一方的に電話を切った。

麻里は相変わらず平気で嘘をつく女だ。

携帯を閉じ、コートのポケットに入れ、家路へと向かった。



一方的に電話を切られたみかは、切られた瞬間から唖然としていた。なぜか携帯のディスプレイをボケーッと見つめている。元々小さい目が余計小さく“点”になっていた。
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