覚めない微熱だけ、もてあましながら
8、始まりは優しい旋律
〈8、始まりは優しい旋律〉
待っていた。
待っていた。
待っていた……
この日を――
こんなにも〈完結〉を迎える日が早かったなんて、
思いもしなかった。
こんなにも物事がトントン拍子に進むなんて、
信じられなかった。
ついに――
最終章だ。
気が早い麻里は、そんな大げさなことを考えていた。完結とか最終章とか、事を大きく考える。
待ち合わせ場所の渋谷へ向かう電車の中で、最後の作戦も成功すると一人気を引き締める。
“どうか、うまくいきますように”
心の中で唱え念じる。
今夜が、最終決戦――
………………
午後七時――
渋谷駅を降り、対向の人ごみに目眩を感じながら麻里は外へ出た。外へ出てもなお同じ状態が続き、歩き進めるとようやく人気がひいた。
少し裏に行くだけで人ごみは避けることができた。麻里は携帯のメモ帳に、まことがアルバイトしているバーの住所を入力し保存していた。書かれている住所を見ながら目的地へ向かった。