覚めない微熱だけ、もてあましながら


そう遠くはなく、わかりやすい場所にあり、すぐに辿り着くことができた。

黒い扉は、何となく開けるのに躊躇してしまう。

とりあえず、みかに電話してみよう。

「ハロー!」

「みか~? もう着いたんだけど」

「本当~? 私もさっき着いてもう中にいるからぁ」

「早っ!」

「じゃ、中で待ってるね! 愛子ももうすぐ来ると思うし!」

「あ、うん……。わかった」



ツーッ、ツーッ、ツーッ……。



電話は切られ一人入口のドアの前で立ち尽くす。

「愛子、まだ来てなかったんだ……」

少しのイラつきと安心を覚えドアを開けた。



「いらっしゃいませ!」



程よく威勢のいい声が聞こえ白いシャツに黒のベスト、黒のパンツをはいたスラッとしたウェイターがやって来た。

「お客様、お一人様ですか?」

「……はい」

はい、と言いながら奥を覗き込む。するとみかが大きく手を振っているのが見えた。

「あの……待ち合わせしてるんで……あそこの席です」
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