覚めない微熱だけ、もてあましながら
不安そうな顔をしてた愛子は笑顔になり席まで来た。
「愛子~お疲れ~。ここ、すぐわかった?」
「ん~……ちょっと迷った」
「愛子、私も迷ったんだよ、ここ。駅近じゃないしさ~」
「うん」
女が三人揃ったところでウェイターが席に来た。
「お飲み物のご注文をお伺い致します」
三人はそれぞれに顔を見合わせた。
「あ、私はビール」
「じゃあ私もビールで」
みかが言い、麻里が後に続いた。
「え……、あ、じゃあビール三つで」
「かしこまりました」
ウェイターは伝票に記入し、テーブルの縁のクエスチョン型の釘に伝票を引っ掛けた。そして、一礼して去っていった。
みかはウェイターが去っていったのと同時に、
「ちょっと愛子、大丈夫なの? ビール飲めるの?」
「大丈夫! ビールくらい……。あ、それよりさ、私まこと君の店に来たいなんて言った覚えがないんだけど~」
「えっ? 言ったじゃな~い! 確か……夏野君と会った時……」