覚めない微熱だけ、もてあましながら


不安そうな顔をしてた愛子は笑顔になり席まで来た。

「愛子~お疲れ~。ここ、すぐわかった?」

「ん~……ちょっと迷った」

「愛子、私も迷ったんだよ、ここ。駅近じゃないしさ~」

「うん」

女が三人揃ったところでウェイターが席に来た。

「お飲み物のご注文をお伺い致します」

三人はそれぞれに顔を見合わせた。

「あ、私はビール」

「じゃあ私もビールで」

みかが言い、麻里が後に続いた。

「え……、あ、じゃあビール三つで」

「かしこまりました」

ウェイターは伝票に記入し、テーブルの縁のクエスチョン型の釘に伝票を引っ掛けた。そして、一礼して去っていった。

みかはウェイターが去っていったのと同時に、

「ちょっと愛子、大丈夫なの? ビール飲めるの?」

「大丈夫! ビールくらい……。あ、それよりさ、私まこと君の店に来たいなんて言った覚えがないんだけど~」

「えっ? 言ったじゃな~い! 確か……夏野君と会った時……」

< 93 / 147 >

この作品をシェア

pagetop