秘密、だよ。
先生


“先生の秘密、私は知ってるよ。
先生はね、人を殺したことがあるの。
その人は、先生の彼女だった人なんだ。

理由なんて知らないけど、
人殺しって事実は変わりないよね。


だから、先生。
私と付き合おうよ。


私と付き合ってくれたら、
先生の秘密守ってあげる。
守れなかったら、


私のこと殺してもいいからね。


だから、ね。
付き合おうよ。”




僕が担任を持っているクラスの中でも、
不思議な雰囲気を持っている
望月 花香(モチヅキ カオリ)
に脅されたのは、
ちょうど2週間前のことだ。


僕は帰宅時間ギリギリまで、
次の日の授業の用意をするため
職員室で作業をしていた。

すると、望月が職員室に入ってきて
相談があると僕に深刻そうな顔で言った。

僕は今日はもう遅いから明日聞く
と言って帰そうとした。
でも、望月は下がらなかった。



そして、僕の秘密を知っている
と言い出したのだ。



望月は陸上部で、遅くまで
練習をするような熱心な生徒。

少し変わっていても良い子なのだと思い
ヤンキーやギャル等と問題児ばかりの
僕のクラスでは比較的に
安心できる生徒だった。


しかし、その望月は僕の人生で
最大の秘密であり、
唯一と言っていいほどの
汚点を何故か知っていた。


僕はその罪を犯すまで、
犯したあとも警察から逃げ切り、
完璧な計画で生活してきた。

いい中学・高校・大学に入り、
教員免許を取得したのち、
今の高校へと勤め始めた。

この高校も、県では有名な進学校だ。


自分で言うのもなんだが、
本当に完璧な人生を歩んでいる。
たった1つ、本当にたった1つの

間違い以外は。
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