秘密、だよ。
優奈はいつものようにソファー
に座って僕を待っていた。
僕の姿を確認するなり、優奈は
お茶をいれると言ってキッチン
へ行ってしまった。
僕は優奈が帰るまでに、
自分の緊張感を取り払おうと
必死になって無になった。
今思うと、それがいけなかった
のかもしれない。
『はい。』
目を閉じて精神統一していた僕は、
優奈が帰ってきたことに気づかず
少し驚いたが、優奈がいれた
いつものコーヒーを飲むと、
緊張していた心が少しほどけた
ような気がした。
それは僕の勘違いだったと
今なら胸を張って言えるが。
『話って、何…?』
意外なことに、話を切り出したのは
優奈だった。
いつもは何か話そうとすると
さり気なく避けていたのに。
僕は珍しく積極的に話を進める
優奈に酷く驚いていた。
『優奈、僕に何か隠し事を
しているよね?』
僕が落ち着き払って言うと、
優奈は下を向いて動かなくなった。
無言が続く。
『…。』
あの時、僕は危険だと知りながらも
この話をしたんだ。
優奈が答えないのも無理はない
ような秘密を僕は知ってしまったから。