計算できない恋愛
好きへの変位
「おはよう、福田」
うだるような暑さにうんざりしながら、ようやく辿り着いた涼しい教室。
乱暴に鞄を机の上に投げ捨てると、隣の席の高田が声を掛けてきた。
今日も銀縁の眼鏡がよく似合っている。
「おはよう、朝からテスト勉強してんの?気色悪」
高田の机に広げられた生物の便覧が目に入り、挨拶代わりにそんなことを言う私。
「生物は、生命の神秘だよ、福田!ほら、この遺伝子の・・・」
朝から生物マニアによる遺伝子ストーリーなんて聞きたくもない。
私は眼鏡の変態を華麗に無視して自動販売機に向かった。
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