TWILIGHT SLIDER
「――それで、大村さんは警察に何て答えたの?」

夕夜は華に聞いた。

「何にもないって、答えました」

そう答えた華に、夕夜は顔をあげた。

「何にもないって…君は、彼から暴力を」

「隆一は普段は優しい人なんです!」

夕夜の言葉をさえぎるように、強い口調で華が言った。

「殴られるけど、優しい人なんです!

だから…」

「けど、君は…」

華の目から涙がこぼれ落ちた。

「優しい人だから、好きなんです…。

私を助けてくれた人だから、優しい人だから…」

うわ言のように呟いて、華は両手で顔をおおった。

華の泣き声が静かになった病室に響いたその時だった。

ガチャッ

この場の空気を破るように、病室のドアが開いた。
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