TWILIGHT SLIDER
綾乃の言葉に、華は顔をあげた。

「愛する彼氏さんに殴られたくないんでしょ?

だったら夕夜に近づかないで」

“彼氏さん”のところを強調して、綾乃が言った。

「夕夜はあなたのものじゃないのよ?

私のものなんだから」

華は目を伏せると、
「――わかりました…」
と、呟くように言った。

「約束は、お守りします。

桜木先輩には、もう近づきません」

華の言葉に綾乃はニヤリと笑うと、
「よかったわ、あなたが話のわかる人間で」

そう言って、華の横を通り過ぎた。

綾乃が去ったのと同時に、華は逃げるように待合室を出て病院を飛び出した。

その瞬間、華の目から涙がこぼれる。

(――約束だから、仕方がない…)

泣きながら、華は自分に言い聞かせた。
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