TWILIGHT SLIDER
夕夜は綾乃の恋人で、自分は八神の恋人だ。

どう考えて見ても、自分は夕夜の恋人じゃない。

だから、綾乃との約束を絶対に守らなければいけない。

何より…もう夕夜には、自分のために傷ついて欲しくない。

そのためには、自分は夕夜に近づいてはいけない。

それが、今の自分にできることである。

夕夜を傷つけないための唯一の方法なのだからと、華は自分に言い聞かせると病院の前を立ち去った。


「ただいま」

カチャッとドアが開いて、綾乃が病室に入ってきた。

「ああ、お帰り」

窓の外を見ていた夕夜は、綾乃に視線を向けた。

「大村さんは?」

「用事があるからって言って、帰っちゃった」

「そう」

綾乃は夕夜にグレープフルーツを見せた。
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