TWILIGHT SLIDER
声色だけでも綾乃の様子が読み取れそうだった。

「私、話のわかる人間って大好きなのよね」

独り言みたいにそう言うと、綾乃は病室を後にした。

そんな綾乃の様子に夕夜は何か予感を感じた。

「あいつ、大村さんに何をしたんだ…?」

そう呟いた夕夜の声が病室に響いた。


(――私は愛されているんだから)

帰り道、綾乃は自分自身に言い聞かせた。

あの頃の自分とはもう違うのだ。

ちゃんと自分を愛してくれる人がいるからだ。

ふいに起こしそうになるフラッシュバックを、綾乃は必死で消した。

今の自分は愛してくれる人がいるから違うのだと、心の中で何度も言い聞かせた。

「――夕夜は私のものだから…」

口に出して言い聞かせるように、綾乃は呟いた。
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